【レビュー】旅も、動画も、日常も。XF18-120mmF4 LM PZ WRが「究極の1本」になり得る理由

XF18-120mmF4 LM PZ WR
出典:FUJIFILM

カメラバッグの中に、あと何本のレンズを詰め込めば気が済むのだろうか——。

かつて、私たちは「ズームレンズは便利だが、画質や使い勝手に妥協が必要なもの」という認識を持っていました。特に広角から望遠までをカバーする高倍率ズームや、動画に特化したパワーズーム(PZ)レンズは、どこか器用貧乏な印象を拭えなかったのも事実です。

しかし、富士フイルムが2022年に世に送り出したFUJINON XF18-120mmF4 LM PZ WRは、その既成概念を鮮やかに塗り替えました。スチル(静止画)のクオリティを一切犠牲にせず、動画制作におけるプロフェッショナルな要求に応え、さらには機動力という最大の武器を手にしています。

数ヶ月間、このレンズと共に様々な現場を歩き、見えてきた「真実」を余すことなくお伝えします。

目次

絶妙な焦点距離。35mm判換算27mmから183mmの魔法

まず注目すべきは、その焦点距離です。18mmから120mm(35mm判換算で27mmから183mm相当)というレンジは、日常のほぼすべてのシーンを網羅します。

  • 広角端 18mm: 旅先の雄大な風景、狭い室内でのスナップ、そしてVlog的な自撮り。
  • 望遠端 120mm: 遠くの被写体を引き寄せるだけでなく、美しい圧縮効果を活かしたポートレートや、スポーツシーンの切り出し。

これ一本あれば、レンズ交換のためにシャッターチャンスを逃すことはありません。特に砂埃の舞う屋外や、一分一秒を争うドキュメンタリー撮影において、この「レンズ交換不要」というスペックは、どんな高級単焦点レンズよりも価値があると感じます。

動画と静止画をシームレスに繋ぐ「パワーズーム」の真価

このレンズの最大の特徴は、名前に刻まれたPZ(パワーズーム)にあります。しかし、単なる電動ズームではありません。

ズーム時のピントのズレ(フォーカスシフト)の抑制

一般的なズームレンズでは、ズーミング中にピント位置が微細にズレることがあります。しかし、XF18-120mmF4は、ズーミング時のフォーカス追従性能が極めて高く設計されています。動画撮影中にズームイン・アウトを行っても、被写体にピントが吸い付いたまま。これは、シネマレンズの開発で培われた富士フイルムの技術の結晶です。

ズーム操作の多様性

鏡筒には、通常のズームリングに加えて「ズーム/フォーカス・コントロールリング」「ズームレバー」が搭載されています。

  • 指一本で一定速度のズーミングを可能にするズームレバーは、プロのような滑らかな映像表現を約束します。
  • 設定により、ズーム速度を細かく調整できるため、じわっと寄るスローな演出から、素早いフレーミング変更まで自由自在です。

F4通しの開放F値が生み出す、一貫した表現

高倍率ズームにありがちな「ズームすると暗くなる(可変F値)」というストレスが、このレンズにはありません。ズーム全域で開放F値4

これにより、マニュアル露出で動画を撮っている最中にズームしても、露出が変わってしまう心配がありません。また、望遠端120mm(換算183mm)でのF4は、背景を驚くほど美しく整理してくれます。ボケ味も非常に素直で、ザワつきが少なく、被写体を浮かび上がらせる力を持っています。

驚異の機動力。インナーズームが生む安定感

個人的に最も感動したのは、「インナーズーム構造」を採用している点です。ズーミングしてもレンズの全長が変わりません。

これが何を意味するか。

  1. ジンバル運用の最適解: 重心バランスが変わらないため、一度バランス調整をすれば、広角から望遠までジンバルの再調整なしで撮影を続けられます。
  2. 防塵・防滴・耐低温構造: 鏡筒が伸び縮みしないため、内部に埃や湿気を吸い込みにくい。-10℃の耐低温構造も相まって、過酷な環境下での信頼性は抜群です。
  3. コンパクトな取り回し: 全長約123.5mm、質量約460g。このスペックを考えれば、驚異的な軽さです。

光学性能と描写力へのこだわり

「便利レンズだから画質はそこそこ」という時代は終わりました。

レンズ構成は12群15枚(非球面レンズ3枚、EDレンズ3枚)

実際に撮影した画像を確認すると、画面中心部の解像度は開放から非常に鋭く、色収差も極限まで抑えられています。富士フイルム独特の「記憶色」を再現するフィルムシミュレーションとの相性も良く、特に「Velvia」での鮮やかな風景や、「ETERNA」でのシネマティックな質感表現において、このレンズの階調の豊かさが活きてきます。

最短撮影距離はズーム全域で0.6m。マクロ的な使い方はできませんが、望遠側で被写体に寄れば、十分なクローズアップ撮影が可能です。

詳細スペック表

公式ページに基づく正確なスペックは以下の通りです。

項目仕様
レンズ構成12群15枚(非球面レンズ3枚、EDレンズ3枚)
焦点距離f=18-120mm(35mm判換算:27-183mm相当)
画角76.5° – 13.5°
最大口径比(開放絞り)F4
最小絞りF22
絞り形式7枚(円形絞り)、1/3ステップ(全16段)
最短撮影距離0.6m(接写性能:最大撮影倍率 0.2倍)
外形寸法(最大径×長さ)約Φ77.3mm x 123.5mm
質量約460g(レンズキャップ・フード含まず)
フィルターサイズΦ72mm

誰のためのレンズか?

このレンズを「万人向け」と言うつもりはありません。しかし、以下のような方にとっては、これ以上の選択肢はないと断言できます。

  • ハイブリッド・クリエイター: 写真も撮るが、動画の比重も高い。現場で機材の組み替え時間を最小限にしたい方。
  • トラベル・ドキュメンタリスト: 荷物を減らしつつ、広大な風景から遠くの感動的な瞬間まで、すべてを最高の画質で残したい方。
  • ジンバルユーザー: ズーミングによる重心変化に悩まされてきたビデオグラファー。

一方で、F1.4やF2といった極限の明るさや、とろけるような大きなボケを求めるなら、単焦点レンズ(XF33mmF1.4やXF56mmF1.2など)に軍配が上がります。しかし、この一本がもたらす「撮り逃さない自由」は、何物にも代えがたい快感です。

結論:Xマウントの新基準

XF18-120mmF4 LM PZ WRは、単なる「便利なズームレンズ」ではありません。それは、富士フイルムが提示した「静止画と動画の境界線をなくす」というビジョンの具現化です。

リニアモーター(LM)による高速かつ静粛なAF、パワーズームによる表現の幅、そして一切の妥協がない光学性能。これらが460gという軽量な筐体に凝縮されています。

もし、あなたが「次の撮影に一本しかレンズを持っていけない」と言われたら。

迷わずこのレンズを手に取るべきです。

そこには、今までレンズ交換を理由に諦めていた、新しい世界への扉が待っています。

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