望遠撮影をしていると、ふと「あともう少し寄りたい」と思う瞬間が訪れます。野鳥が枝に止まっている。遠くの山肌に広がる雲の陰影が美しい。スポーツで決定的な瞬間がフィールドの反対側で起きた—そんな時、手持ちのレンズの焦点距離ではどうしても届かない場面があります。
とはいえ、超望遠レンズは高価で重く、気軽に買えるものではありません。
そこで強力な助っ人となるのが「テレコンバーター」です。
この記事では、テレコンバーターの仕組み、選び方、メリットとデメリット、撮影のコツまで徹底的に解説します。あなたの望遠撮影は、これを読むことで一段ステップアップするはずです。
テレコンバーターとは| レンズの焦点距離を伸ばす増幅装置
コンバーター(Teleconverter)は、カメラとレンズの間に装着する専用の光学機器で、焦点距離を伸ばす役割を持っています。
一般的には
- 1.4× テレコン → 焦点距離が 1.4倍
- 2× テレコン → 焦点距離が 2倍
- 一部メーカーには 1.7× などの特殊な倍率も存在します。
例えば、
- 200mmレンズ × 1.4× = 280mm相当
- 200mmレンズ × 2× = 400mm相当
という具合です。
レンズに手を加えなくても、望遠側をシンプルに伸ばせるのがテレコンバーターの魅力。
特に野鳥・飛行機・モータースポーツなど、遠くの被写体を撮るジャンルでは重宝されます。
テレコンバーターのメリット
圧倒的なコストパフォーマンス
テレコンバーター自体はレンズに比べると非常に安価です。
たとえば、600mmレンズを購入すれば数十万円〜100万円以上かかりますが、テレコンなら数万円。
「今あるレンズに付けるだけで望遠効果を拡張できる」のは最大の魅力と言えます。
機材の軽量化につながる
望遠レンズは重い。撮影現場でその重さに耐え続けるのは、体力的にも精神的にも負担が大きいものです。
ところが、テレコンバーターなら
- 本体は小型
- レンズの長さも増えない
- カバンのスペースも圧迫しない
というメリットがあります。
登山撮影や野鳥撮影など「軽さ」が命となる場面では、テレコンを1つ入れるだけで撮影の選択肢が一気に広がります。
画角の柔軟性が高まる
1.4×テレコンを常備しておけば、
- 70-200mm → 98-280mm の準超望遠ズームに
- 100-400mm → 140-560mm の本格超望遠ズームに
簡単に変身させられます。
その場で装着すれば、被写体との距離に応じて柔軟に対応できるのも魅力です。
テレコンバーターのデメリット
もちろん万能ではないため、デメリットも理解しておく必要があります。
F値が暗くなる
テレコンを装着すると、光量が必ず失われます。
- 1.4× → 1段暗くなる(F2.8 → F4)
- 2× → 2段暗くなる(F2.8 → F5.6)
これにより
- シャッタースピードが遅くなる
- ISO感度が上がってノイズが増える
- 明るいレンズが必要になる
などの問題が起こることがあります。
特に夕方の野鳥撮影や室内スポーツでは注意が必要です。
画質の低下
光学系が追加される以上、画質劣化は避けられません。
- 解像感の低下
- コントラストの低下
- 逆光でのフレア増加
- AF精度・速度の低下
特に「2×テレコン」は画質低下が顕著な傾向にあります。
個人的には
- 1.4×は画質の犠牲が少ない
- 2×はレンズの実力を引き出せる場合のみ使う
という使い分けがベストだと感じています。
装着できるレンズが限られる
テレコンはどんなレンズにも付けられるわけではありません。
多くの場合、
- 望遠レンズ
- 高級ラインのレンズ(CanonのL、NikonのS-Line、SonyのG Masterなど)
にのみ対応しています。
広角や標準ズームではほぼ使えません。
テレコンバーターはどんな人におすすめ
野鳥撮影をメインにしている人
野鳥は基本的に遠くにいて、近づくと逃げてしまうため、テレコンが最も活躍するジャンルです。
軽量な100-400mmや70-200mmと組み合わせることで、軽さを保ちつつ焦点距離を伸ばすことができます。
飛行機・鉄道・モータースポーツ撮影
高速で動く被写体を遠くから狙う場合、焦点距離の自由度がものを言います。
明るい時間帯ならテレコンの光量ロスも問題になりにくく、非常に使いやすいです。
旅行撮影で荷物を減らしたい人
数キロ級の超望遠レンズを持ち歩くのは厳しいですが、テレコンならほぼ無視できる重さ。
遠くの建物、山並み、自然の動物など、旅での撮影がぐっと広がります。
テレコンバーターを使いこなすための撮影テクニック
シャッタースピードは速めに設定する
焦点距離が伸びるということは、手ブレの影響も大きくなります。
標準的な手ブレ限界は
1 / 焦点距離
ですが、テレコン使用時はさらに余裕を持つ必要があります。
例:400mm × 1.4 = 560mm
→ 1/560秒では足りず、実際には 1/800〜1/1000秒 が安心。
野鳥なら 1/1600秒 以上にすることも多いです。
AFは中央測距点が有利
テレコン装着ではAFが迷いやすくなります。特に
- 2×テレコン
- 暗いレンズ(F5.6以上)
などでは顕著です。
中央測距点は最も精度が高いため、迷わず中央一点AFに切り替えるのが有効です。
絞りを少し絞ると画質が改善する
開放ではテレコンの画質劣化が出やすいため、
+1段絞る
だけでもシャープさが復活します。
- F4レンズ × 1.4× → F4(実質F5.6)
これを - F8にする
だけで描写が安定します。
高ISOを恐れすぎない
テレコンで暗くなるため、ISOを上げざるを得ない場面が多々あります。
しかし、最新カメラは高ISO耐性が高く、ISO1600〜3200程度なら十分実用的。
「ISOを上げてシャッタースピードを確保する」方が写真の成功率が上がります。
1.4×と2×、どちらを選ぶべき?
1.4×テレコンに向いている人
- 画質をできるだけ落としたくない
- AFの速度が重要な撮影
- 野鳥・スポーツなど動体を狙う
- 暗い場所での撮影も多い
2×テレコンに向いている人
- とにかく焦点距離を伸ばしたい
- 野鳥の超遠距離撮影
- 光量が十分あるシーン
- 使用するレンズの解像力が高い
テレコンバーターは“賢い投資”
テレコンバーターは、
「軽くて安くて焦点距離を伸ばせる」
という最強のコストパフォーマンスを持つアクセサリーです。
しかし同時に、
- 光量の低下
- 画質の劣化
- AF性能の低下
というデメリットもあります。
だからこそ、用途とメリット・デメリットを理解したうえで使いこなすことが重要です。
もしあなたが「もっと遠くの世界を撮ってみたい」と感じているなら、テレコンバーターは間違いなく撮影の幅を広げてくれます。
軽量なセットでチャレンジしたい人にも、超望遠を手軽に試したい人にも、非常におすすめできるアクセサリーです。
あなたのカメラライフが、テレコンバーターによってさらに豊かなものになりますように。

