万能の定義を書き換える。RF24-105mm F2.8 L IS USM Zが「究極の一本」である理由をレビュー

RF24-105mm F2.8 L IS USM Z
出典:Canon

カメラバッグの中に、もし一本しかレンズを入れられないとしたら。

かつて、この問いに対する答えは妥協の産物でした。「便利さを取るなら24-105mm F4、描写を取るなら24-70mm F2.8」。私たちは常に、ズーム倍率と明るさの天秤にかけられ、どちらかを諦めることに慣れきっていました。

しかし、キヤノンが放ったRF24-105mm F2.8 L IS USM Zは、その長年のジレンマに終止符を打つ存在です。このレンズを手に取ってからというもの、私の撮影スタイルは劇的に変化しました。今回は、この「怪物級」の標準ズームレンズが、なぜプロフェッショナルやハイアマチュアの表現を根底から変えてしまうのか、その真価を徹底的に紐解いていきます。

目次

「F2.8」という光の暴力。105mmまで届く開放絞りの衝撃

このレンズの最大の特徴は、言うまでもなく24mmから105mmの全域で開放F値2.8を維持していることです。

これまで、105mmという中望遠域までカバーするレンズは、F4が限界でした。しかし、この「たった1段」の差が、表現においては天と地ほどの差を生みます。

  • ポートレートにおける立体感85mmや105mmでF2.8が使えるということは、標準ズームの利便性を保ちながら、単焦点レンズに近いボケ味を手に入れられるということです。被写体が背景から浮き立つような、Lレンズ特有の滑らかで美しいボケ。これをズーム操作一つでコントロールできる快感は、一度味わうと戻れません。
  • 暗所撮影での圧倒的優位性夕暮れ時や屋内イベントなど、光量が不足するシーン。F4レンズではISO感度を上げざるを得なかった場面でも、F2.8ならシャッタースピードを稼げます。後述する強力な手ブレ補正と相まって、三脚を使えない状況下での「歩留まり」が格段に向上しました。

映像制作の未来を見据えた「Z」の称号

レンズ名に刻まれた「Z」の一文字。これは、キヤノンの新しい設計思想を象徴しています。本レンズは、静止画はもちろん、動画撮影において究極のパフォーマンスを発揮するよう設計されています。

パワーズームアダプターへの対応

別売のパワーズームアダプター「PZ-E2 / PZ-E2B」を装着することで、放送用レンズのような滑らかなズーム操作が可能になります。手動では不可能な超低速ズームから、瞬時の画角変更まで、指先一つでコントロールできる。これは動画クリエイターにとって、表現の幅を広げる大きな武器です。

インナーズームの採用

私がこのレンズを最も高く評価しているポイントの一つが、全長固定のインナーズーム機構です。ズーミングによってレンズが伸び縮みしないため、ジンバルに載せた際の重心バランスが崩れません。動画撮影中に画角を変えても、安定した運用が可能です。また、防塵・防滴構造の観点からも、空気の吸い込みが少ないインナーズームは信頼性が高いと言えます。

スペックから見る「本気度」

ここで、キヤノン公式が発表している主要なスペックを整理してみましょう。数字を見るだけでも、このレンズがいかに「無理を通した」設計であるかが分かります。

項目スペック
画角(水平・垂直・対角線)74°〜19°20’・53°〜12°50’・84°〜23°20′
レンズ構成18群23枚
絞り羽根枚数11枚(円形絞り)
最小絞り22
最短撮影距離0.45m(24mm〜105mm時)
最大撮影倍率0.08倍(24mm時)、0.29倍(105mm時)
フィルター径82mm
最大径×長さ約φ88.5mm × 199mm
質量約1,330g(三脚座含まず)
手ブレ補正効果5.5段(本体のみ)/ 8.0段(協調制御時)

特筆すべきは、11枚の絞り羽根です。これにより、絞り込んでも光芒が非常に美しく、ボケの形状も円形を保ちやすくなっています。また、最短撮影距離が全域で0.45mと短く、105mm側では被写体にぐっと寄ったマクロ的な表現も可能です。

妥協のない描写性能:4枚のUDレンズと3枚の非球面レンズ

「便利ズームは画質が甘い」という先入観は、このレンズには通用しません。18群23枚という豪華なレンズ構成の中には、色収差を極限まで抑えるUDレンズ4枚、そして歪曲収差や球面収差を補正する非球面レンズ3枚が惜しみなく投入されています。

実際に撮影したデータを見ると、絞り開放から画面周辺部まで驚くほどシャープです。特に、最新のRFマウントがもたらすバックフォーカスの短さを活かした設計により、解像力だけでなく、コントラストの再現性やヌケの良さが際立っています。

さらに、キヤノン独自の特殊コーティングASC(Air Sphere Coating)が採用されており、逆光時のフレアやゴーストもしっかりと抑制されています。太陽を画面内に入れるような過酷なライティングでも、ドラマチックな光だけを残し、不要な反射は排除してくれる。この安心感こそがLレンズの証明です。

1,330gという重量をどう捉えるか

正直に言いましょう。このレンズは重いです。三脚座を除いて約1,330g。全長は約20cm。EOS R5などのボディと組み合わせれば、システム全体で2kgを超えます。

しかし、この重さは「必要な重さ」です。

もし、24-70mm F2.8と70-200mm F2.8の2本を持ち歩くとしたら、総重量はさらに増え、何より「レンズ交換」という決定的なタイムロスが発生します。

  • シャッターチャンスを逃さない広角から中望遠まで、レンズ交換なしで瞬時に切り替えられる。このメリットは、刻一刻と表情を変えるドキュメンタリーやウェディング、スポーツの現場において、重量のデメリットを遥かに凌駕します。
  • アイリスリング(絞りリング)の搭載RFレンズとして初めて、シネマレンズのような操作感を実現するアイリスリングを搭載(静止画撮影時はEOS R1 / R5 Mark II以降などで対応)。直感的な露出コントロールが、撮影のテンポを加速させます。

このレンズは、単なる「便利なズーム」ではなく、「複数の単焦点レンズを一つの筐体に収めた」と考えるべきプロダクトなのです。

どんなシーンで「最強」となるのか?

私がこのレンズを実際に現場へ持ち出し、確信した「最高の使い所」をいくつか挙げます。

舞台・ライブ撮影

暗い客席からステージを狙う際、24mmでステージ全体を、105mmで演者のアップを、すべてF2.8で捉えられる恩恵は計り知れません。静粛性に優れたナノUSMによる高速AFは、演者の動きをピタリと止め、決定的な瞬間を逃しません。

スタジオポートレート

モデルとのテンポを崩したくないスタジオ撮影において、レンズ交換はリズムを遮るノイズになります。24mmのダイナミックなパースから、105mmの端正な描写まで、立ち位置を大きく変えずに画角をコントロールできるため、モデルとのコミュニケーションに集中できます。

風景・山岳写真

過酷な環境下でのレンズ交換は、センサーへのゴミ混入のリスクを伴います。インナーズーム・防塵防滴のこのレンズなら、厳しい自然の中でも安心して撮影を続けられます。広角でのパノラマ的な切り取りから、望遠側での圧縮効果を活かした表現まで、一本で完結するのは大きな強みです。

結論:これは「投資」に値する一本か

RF24-105mm F2.8 L IS USM Zは、決して安価なレンズではありません。そして、決して軽いレンズでもありません。

しかし、この一本が手元にあることで、これまで諦めていたアングル、逃していた光、撮れなかった表情が、確実にあなたの記録に加わります。「ズーム全域F2.8」というスペックがもたらす自由は、一度手にすれば、もはやこれ以前の自分には戻れないほど強烈です。

もしあなたが、写真と動画の境界を越えて表現を突き詰めたいと考えているなら。

もしあなたが、レンズ交換の煩わしさから解放され、目の前の被写体と真剣に向き合いたいなら。

このレンズは、あなたの期待を裏切ることはありません。

それは、キヤノンが次の10年を見据えて提示した、標準ズームレンズの「完成形」なのです。

あなたのカメラバッグに、この「Z」を迎え入れる準備はできていますか?

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