カメラの設定の中でも、意外と理解されないまま とりあえず使われている のが ドライブモード です。
しかし、ドライブモードは撮影の歩留まりを大きく左右する、非常に重要な設定。動体撮影からポートレート、夜景、風景撮影まで、狙う写真のジャンルに合わせて正しく使い分けることで、撮影のクオリティは一段と向上します。
この記事では、ドライブモードの仕組みや種類、撮影ジャンル別のオススメ設定、実践テクニック をわかりやすく解説します。「いまさら聞けない」という方にも安心して読んでいただける内容です。
ドライブモードとは? その基本的な理解
ドライブモードは、カメラが一度シャッターを切った後に、どのように動作し、次の撮影に備えるかを決定する設定です。多くのカメラでは、以下の基本的なモードが用意されています。
シングル撮影 (S / Single)
最も基本となるモードで、シャッターボタンを一度押すと、一枚だけ撮影されます。
特徴
意図した瞬間を確実に一枚で切り取りたいときに最適です。撮影後、シャッターチャージやデータ書き込みが行われますが、次のシャッターを切るまでカメラは完全に静止します。
最適なシーン
風景、静物、落ち着いたポートレート、三脚を使用した低速シャッター撮影。
連続撮影 (C / Continuous / 連写)
シャッターボタンを押し続けている間、カメラが設定された速度で連続してシャッターを切り続けるモードです。
種類
- 高速連続撮影 (H / High): 1秒間に多くのコマを撮影するモード。
- 低速連続撮影 (L / Low): 1秒間のコマ数を抑えたモード。
特徴
動きのある被写体の決定的な瞬間を逃さないために使います。特にスポーツ、野鳥、子供の動きなど、予測不能な動作を捉える際に必須です。
最適なシーン
スポーツ、動物、鉄道、報道写真、ブライダルでの入場シーンなど。
セルフタイマー撮影
シャッターボタンを押した後、設定された秒数(例:2秒、10秒)が経過してからシャッターが切れるモードです。
種類
- 単発: タイマー作動後、1枚だけ撮影。
- 連写: タイマー作動後、指定枚数を連写。
特徴
集合写真や自撮り(セルフポートレート)の際に便利です。また、三脚使用時にシャッターボタンを押すことによる微細なブレ(手ブレ)を防ぐ目的でも使われます。
最適なシーン
集合写真、星景写真、長時間露光、セルフポートレート。
静音撮影モード (Q / Quiet / サイレント)
シャッターの作動音やミラーの動作音を抑えるモードです。(一眼レフの場合はミラーアップのタイミングを遅らせたり、ミラーレスでは電子シャッターを使用したりします。)
特徴
音を立てられない環境での撮影に絶対的に必要です。電子シャッターを使用する場合、シャッター音はゼロになりますが、ローリングシャッター歪みやフリッカー(蛍光灯のちらつき)の影響に注意が必要です。
最適なシーン
美術館、劇場、クラシックコンサート、結婚式(式典中)、静かな環境での野鳥撮影。
「連写」の真髄:高速連写と低速連写の使い分け
連写モードは、ドライブモードの中でも最も奥深く、プロの技術が問われる領域です。ただ速く撮れば良いわけではありません。
高速連続撮影 (High-Speed Continuous) の戦略的活用
高速連写は、文字通りカメラの最高性能を引き出すモードです。
活用シーン
- アクションの頂点: 野球のバットがボールに当たる瞬間、鳥が飛び立つ瞬間、水しぶきが上がる瞬間など、0.1秒以下の決定的な瞬間を狙うとき。
- 表情の変化: ポートレートで、笑顔から真顔へ、あるいは振り向く一瞬などの微妙な表情の動きを捉えるとき。
バッファと書き込み速度の管理
高速連写の最大の敵は「バッファ詰まり」です。カメラの内蔵メモリ(バッファ)がいっぱいになると、書き込みが終わるまで連写速度が極端に落ちてしまいます。
対策
- 最速のメモリカード(CFexpressやUHS-II対応SDカード)を使う。
- 無駄な連写を避ける(必要以上に長くシャッターを押し続けない)。
- 画質設定をJPEGや圧縮RAWに落とすことも検討する。(最終的に画質が優先される場合は非推奨)
低速連続撮影 (Low-Speed Continuous) の「リズム」
高速連写よりも低速連写(例:3〜5コマ/秒)を好む場面が多くあります。これは、写真に「リズム」と「つながり」を生むためです。
活用シーン
- ストーリーテリング: モデルが歩き出す、振り返る、階段を上るなど、動作の「流れ」を数枚のカットで表現したいとき。
- シャッターチャンスの予備: スポーツで、一連の動作の始まりから終わりまでを記録として残しつつ、後でベストな一枚を選ぶとき。
- 落ち着いたポートレート: 撮影のリズムを崩さずに、カメラマンと被写体のコミュニケーションを続けながら、微妙なポーズの違いを撮り分けたいとき。
セルフタイマーのブレ防止効果
セルフタイマーは集合写真のためだけにあると思ったら大間違いです。プロは、写真の「揺るぎなさ」を追求するためにセルフタイマーを使います。
特に三脚を使った撮影で、シャッターボタンを指で押す行為そのものが、カメラにわずかな振動を与え、写真がブレる原因となります。
活用シーン
- 長時間露光: 夜景や星景写真、滝や海面のシルキー表現など、数秒以上の露光時間が必要なとき。
- 高解像度風景: 絞り込んで撮影する風景写真で、わずかなブレも許容できないとき。
2秒タイマーの活用
0秒タイマーでは間延びしてしまいます。多くのカメラにある「2秒セルフタイマー」を使用することで、シャッターを押した指を離し、カメラの振動が完全に収まった直後にシャッターを切ることができます。これは、リモートレリーズ(ケーブルスイッチ)がない場合の、最も確実なブレ防止策の一つです。
ドライブモードを理解すると写真は劇的に変わる
ドライブモードは、撮影スタイルに合わせて「カメラの撮り方そのもの」を変える重要な設定です。
シーンに最適なモードを選べば、
- 歩留まりが上がる
- シャッターチャンスに強くなる
- 被写体のベストな瞬間を確実に切り取れる
という大きなメリットがあります。
初心者ほど「シングル撮影のまま撮ってしまう」傾向が強いですが、ドライブモードを使い分けるだけで写真の完成度は一気に向上します。
ぜひこの記事を参考に、あなた自身の撮影スタイルに合わせて最適なモードを選んでみてください。

